公平な選挙制度を!


by sea_of_sound_2008
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 「The U.S. Air Base on Okinawa」と題された下地良男さんの The New York Times への投書の存在を、最初に報道したのは琉球新報だと思います。この投書の最後の一文「How dare Mr. Obama ask Mr. Hatoyama to act without regard to the wishes of his compatriots? 」を、同紙は記事中で「よくもオバマ氏は、同胞である鳩山氏の意思を無視することができますね」と訳しています。
How dare Mr. Obama ask Mr. Hatoyama to act without regard to the wishes of his compatriots?
よくもオバマ氏は、同胞である鳩山氏の意思を無視することができますね

 私はこれは誤訳ではないかと思うのです。ところでなぜ、私がこの文章をですます調で書いているかというと、この指摘に自信がないからです。このブログの読者には、そうした事情を考慮しながらこのエントリを読んで欲しいのです。それでは原文と比較しながら、この琉球新報の訳の正当性を検討します。


 まず、全体を見て気付くのは、「ask」という動詞が全く訳文に登場していないことです。「ask one to ~」で「誰々に~するよう要求する」といった意味になりますから、この一文は取り敢えず大ざっぱに「オバマ大統領が鳩山首相に何かをするように要求する」と捉えることができます。

 そのオバマ大統領が要求している「何か」とは何でしょうか。「act without regard (無視して行動すること)」でしょう。では、無視されるのは何か。「the wishes of his compatriots」です。この「act without regard to the wishes of his compatriots」という箇所を、部品に分けつつ順番に取り上げていきましょう。


 先に「the wishes」に注目すると、琉球新報はこれを「(鳩山氏の)意志」と訳しています。しかしこの部分は複数形です。複数形なのは「the wishes」が沖縄県民のそれであるから、つまり「沖縄県民の願い」であるからではないでしょうか。鳩山氏のものであるとすれば、複数形であることの説明が付きません。

 しかも「願い(wishes)」には「the」という定冠詞がついているのです。これを「オバマに屈服こそしたが、当初は鳩山首相が持っていた願いのこと」と解釈するのは、無理があるような気がします。この投書は全体的として、沖縄県民の思いを伝えるものですから、直前の「沖縄人の圧倒的多数は(The overwhelming majority of Okinawans )…」という文から考えても、「沖縄県民の願い」と訳す方が自然でしょう。


 次に、最後の単語である「compatriots」に目を移しましょう。この単語の意味は「同国人」です。たぶん語源からしても「仲間」とか「主義主張を同じくする人」程度では使いません。日本が果たして「西側」に属しているのか、自由主義国家なのか、民主主義国家なのか、という疑問もありますが(アメリカは本当に民主主義国家なのかというより強力な疑いもありますが)、とりあえずそれは脇に置いておきましょう。

 ちなみに日本語の「同胞」はまさに「同国人」という意味ですから、「compatriots」の訳語としては適切です。しかし「compatriots」の持つ意味からすれば、「同胞である鳩山氏」というのは明らかにおかしいのではないでしょうか。それに、この単語は「compatriots」と複数形になってますね。つまり、「compatriots」とは沖縄県民のことを指していると考えられます。鳩山首相という個人を複数形では呼ばないでしょう。

 ひょっとして「同胞である鳩山氏」という表現は、「沖縄県民にとっての同胞である鳩山氏」という意味なのかもしれません。しかし、その部分の原文は「his compatriots」なのです。「his」が沖縄県民であることはありえませんから、オバマ大統領か鳩山首相を指すしかないのですが、前段で述べた二つの理由から、これは鳩山首相のことだとわかります。


 したがって「act without regard to the wishes of his compatriots」とは、「彼の同国人(沖縄県民)の願いを無視して行動すること」になると思います。最初に大まかに訳しておいた前半と合わせるならば、「オバマ大統領が鳩山首相に同国人(沖縄県民)の願いを無視して行動するように要求する」となります。

 文章を整えつつ全てを訳すならば、「よくもオバマ大統領は、鳩山首相に彼の同国人(沖縄県民)の願いを無視して行動するように、要求することができますね」です。鳩山首相に有権者の願いを裏切るように求めることは、アメリカの至上の価値である民主主義というイデオロギーに反してるのではないか、と言っているわけです。


 さて、「よくもオバマ氏は、同胞である鳩山氏の意思を無視することができますね」という訳が、誤訳であるという私の指摘が当たっているかどうかわかりません。しかし琉球新報の訳と私の訳で、この部分の文面が違っていることの説明にはなるのではないでしょうか。
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by sea_of_sound_2008 | 2010-05-31 19:52 | 雑記
 ブログ「どこへ行く、日本。」で知った、下地良男琉球大名誉教授による The New York Times への投書「The U.S. Air Base on Okinawa」の翻訳です。もちろん表現の選択などは私によるものですので、これがそっくりそのまま下地教授の言いたいことだと誤解しないでください。誤訳その他はコメント欄にてどうぞ。
沖縄の米空軍基地
編集者へ


 「選挙公約に違反して沖縄の米軍基地で折れた日本(Japan Relents on U.S. Base on Okinawa)」(5月24日の記事)は、普天間のアメリカ海兵隊飛行場を――元々の合意通りに――沖縄の北部に移設するという鳩山由紀夫首相の発表を、「オバマ政権の勝利であり鳩山首相にとっては屈辱的な挫折」として描いています。

 明らかにこのつまらない口喧嘩で、鳩山政権は2006年の日米合意に固執するオバマ政権の全面的な圧力に屈服したのです。鳩山首相はこの前の選挙運動の最中に、普天間の機能を沖縄県外に移設すると言うことによって、沖縄人の期待を高めていました。

 しかしながらオバマ政権は、この勝利はまた自己に対する敗北であることを心に留めておかなくてはなりません。なぜならそれは、「非民主的な」あるいは「啓蒙されていない」国家を相手にする時に、ワシントンが唱道する民主主義の原則に矛盾するものだからです。

 ワシントンが充分に気付いているように、沖縄人の圧倒的多数は沖縄に米軍基地を駐留させ続けるあらゆる計画に反対しています。なんでまたオバマ大統領は、鳩山首相に同国人の願いを無視して行動するように要求するのでしょう?


下地良男
那覇,沖縄,2010/5/24

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by sea_of_sound_2008 | 2010-05-31 11:55 | 政治
 BBC News の記事「S Koreans divided over response to North」の訳です。私の翻訳を信用せず、重要な箇所は原文で確かめてください。誤訳その他はコメント欄にどうぞ。
北朝鮮への反応で分かれる韓国人

 3月26日に北朝鮮との領海近くで沈んだ軍艦をめぐり、朝鮮半島では緊張が高まっている。

 合同調査団は、北朝鮮の潜水艦から発射された魚雷が船を沈没させたとしているが、ピョンヤンはそれを否定している。韓国は北朝鮮との貿易的つながりを停止してしまった。

 事件の深刻さを、そして北朝鮮にどう対処するのが最善かを、韓国の読者が議論する。


Kyungho Rhee, student, Seoul

 北朝鮮はメッセージを送ろうとしている。彼らは、韓国の人々に大きな怒りを引き起こしつつ、たまにこんなことをする(?)。

 韓国はとても強くなった――立脚点を明らかにしておくならばね(?)。

 北朝鮮との貿易を止めるのは正しい行為だ。けれどもそれが深刻な結果をもたらすとは思わない。

 ここでは戦争への欲求(appetite for war)がそんなにあるわけじゃないんだ。経済は強くなりつつあるけど、戦争は僕らをひどく傷つけてしまう。

 僕らにはとても強い軍隊があるわけじゃない。アメリカの支援があるが、それに頼るわけにはいかない。だから北朝鮮との交易を止めるのが、僕らにできる最善のことだ。

 長期的な観点から見るなら――僕が思うに最も大きな影響力を持っているのは中国だ。この問題をどう展開するのか、彼らはその鍵だ。

 僕は、韓国とアメリカは、中国を北朝鮮に働きかける位置に戻すように、努力をしなければならないと信じている。けれど、それは大変な苦闘になるだろう。


Junwhan, 38, government official, Seoul

 天安艦の沈没はとてもシリアスな事件だ。私は水兵たちの死にショックをうけ大変悲しい気持ちになった。

 私はとても心配している。というのは、これが朝鮮戦争以来北朝鮮によるもっとも挑発的な行為だからだ。

 核実験や長距離ミサイルの実験も非常な脅威だったが、それらは実際に韓国の人々を傷つけたわけではない。この事件は人々の命を犠牲にしてしまった。

 数年前に北朝鮮の船舶が北方限界線 [inter-Korean maritime border] を越え、二つのコリアの間に衝突が起きた。北朝鮮は復讐を誓った。

 北朝鮮はまた韓国の外交力、特にアメリカとの関係、を試したかった。それに彼らは、韓国が北朝鮮にどう対応するのかについて、非常に分かたれた社会だということを知っている。

 個人的に私は、北朝鮮に対するより保守的で強硬な姿勢を支持している。思うに我々は厳しくふせがなければならない、だから貿易削減(?)には全く賛成だ。

 放送も重要だ。金正日は我々の敵だが、北朝鮮の人々は我々の同胞だからだ。彼らは外の世界で何が起きているのか知る権利がある。


Lee Jae-youn, intern in a company, Seoul

 これは本当に悲しい状況です。安全保障の問題が非常に深刻なので、人々は心配しています。けれど、私たちの中には政府の発表に対して疑いを持つ人もいます。

 そもそも、なぜ今これが起きたのでしょうか?一週間後には選挙が控えていますが、北朝鮮の挑発行為の多くは選挙前の期間に起きました。だから私たちは、この哨戒鑑沈没事件が与党によって悪用されているのではないか?と疑問に思っています。

 私たちの政府は調査結果を事実と見なしていますが、証拠は明瞭とはいえません。私が疑問に思っているのは、爆発があったにもかかわらず、どのようにして[魚雷の残骸の上の]インクペン(ink pen)のマークがまだ存在しているのかということ。それになぜ北朝鮮は魚雷の底に署名したのでしょうか?

 なんにせよ、これは私たちの国にとって非常に悲しいことです。私たちは死んだ四十六人の水兵の追悼式で一緒に涙を流しました。だから、私はこの事件が誰かの利益のために使われることを望みません。

 これは深刻な状況です。多くの人が戦争について語っています。朝鮮戦争60周年記念日が近づいているし、繰り返し繰り返し我らは彼らに復讐するのだと言う大統領に、私たちは気が気でない思いをしているのです。


Gyuhang Kim, student, Seoul

 僕やその他の多くの人々は、韓国政府が証拠を作り上げ(making up the proof)さえして、故意に北朝鮮を非難しているのではないかと疑っている。

 僕たちはみな政府の反北朝鮮感情に気付いているし、公式報告書は全く信じていない。

 魚雷前部の「1番」というマークは、あのような衝撃を生き延びて存在することはできない。証拠の信頼性に疑義を呈したいくつかのニュースサイトが理由もなく閉鎖され、僕らは政府の検閲を疑っている。

 それにまた、僕は、再統一に向けて最初の一歩を踏み出そうとするつらい仕事をやってきたこれまでの大統領たち、とりわけ金大中、の長年にわたる苦難の業績を、政府が無駄にしていると思う。

 李明博大統領は、再統一への努力の年月を破壊しているだけではなく、韓国の経済と人々とを北朝鮮との戦争――核戦争もしくは第三次世界大戦への序曲――の危機にさらしている。

 沈没の原因について、噂が広まっている――合同訓練中のアメリカの潜水艦との過ちの可能性のような。それは北朝鮮を非難するために韓国政府によって隠蔽されたとされている。


Choi Jae Woo, 24, science teacher, Cheonan

 この事件のことをとても悲しく思っている。私は兵役で海軍にいた時、同種の艦船で働いていた。こうした攻撃のことは心配したことがなかった。

 私は北朝鮮との戦争の可能性を心配している。友達もまたそのことを心配している。

 私たちは北朝鮮のやったことにとても怒っているが、戦争は望んでいない。

 保守派と進歩派の間では、多くの議論が係争中だ。私は保守派だ。

 私はそんなことはやめて(?)、貿易を中止し、彼らの船が我々の領海に入ってくることを防げと言いたい。けれども、本当に危険なことになるかもしれないから、それ以上のことは無理だ。

 私たちはあまり多くのことはやれない。北朝鮮により大きな影響力を持っているのは中国だ。中国がコントロールしてうまくやっていくことを望んでいるが、彼らが姿勢を変えるとは思わない。

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by sea_of_sound_2008 | 2010-05-26 10:07 | 政治
 以下は Los Angeles Times に掲載された Chalmers Johnson による「もう一つの沖縄の戦い(Another battle of Okinawa)」の翻訳である。誤訳などあったらコメント欄で指摘していただきたい。
もう一つの沖縄の戦い
反対運動にもかかわらず、アメリカは新しい軍事基地を沖縄に建設する計画に固執している


May 06, 2010
チャルマーズ・ジョンソン

 沖縄の軍事基地に対する議論を巡って、合衆国は日本との同盟関係を恒久的に損なう縁《へり》にいる。この島嶼県は、日本におけるアメリカの軍事施設の四分の三を迎え入れている。ワシントンは生態的に繊細な地域にもう一つ基地を建設したがっている。沖縄の人々はそれに烈しく反対しており、先月には何万人もの人々が基地に抗議するために集まった。東京は板挟みになっており、日本の首相はアメリカの要求に屈したかのように見える。

 第二次世界大戦以来アメリカが獲得した地球を取り巻く海外の軍事基地たち――それは130ヵ国700箇所以上にのぼる――の中でも、我々が沖縄に建設したものほど悲しい歴史を持つものは希である。

 1945年には日本はもちろん敗戦した敵国だったし、それゆえ、どこにどのように基地を配置するかについて発言の機会は与えられなかった。日本本土では、我々は単純に彼らの軍事基地を引き継いだだけだった。しかし、沖縄は日本が1879年に併合するまで独立した王国であり、日本は沖縄をアメリカにとってのプエルトリコのようなものだと見なしたままだった。島は太平洋戦争における最後の大きな戦いで破壊され、アメリカは造作もなく欲しいと思った土地を整地し、住人から取り上げるか、強制的にボリビアに移住させた。

 1950年から1953年にかけて沖縄のアメリカ軍基地は朝鮮戦争を戦うために使われ、1960年代から1973年にかけてはヴェトナム戦争の期間中使われた。基地は補給基地と飛行場として提供されただけでなく、兵士たちが休息し気晴らしし、酒場と売春婦と人種差別のサブカルチャーを生み出すための場所となった。いくつかの基地の周辺では黒人と白人のアメリカ兵の喧嘩が執念深く頻発するため、二つのグループの要求を満たすために、隔離された地帯が生み出された。

 アメリカの日本占領は1952年の講和条約とともに終了したが、沖縄は1972年までアメリカ軍の植民地であり続けた。20年間もの間、基本的に沖縄の人々は国家なき民であり、日本のものであれアメリカのものであれ、パスポートも市民権も取得する資格が与えられなかった。日本が沖縄に対する統治権を取り戻した後も、アメリカ軍は数々の基地で起こることに対して、沖縄の空域に対して、支配を保ち続けた。

 1972年以来日本政府とアメリカ軍は、沖縄の人々が自分たちの未来について意見することをすっかり否定することで共謀しているが、それがゆっくりと変化しつつある。例えば1995年には、二人の海兵隊員と一人の水兵が、12才の少女を拉致し強姦した件で告訴された後、基地に反対する大規模なデモがいくつも開催された。1996年には、アメリカは宜野湾市にすっかり囲まれている普天間基地を返還する用意があることで合意したが、日本が沖縄のどこかに別の基地を代わりに建設することを条件としていた。

 そして名護市を候補とする案が生まれた(2006年の米日の合意までは正式ではなかった)。名護市は沖縄本島の東北部に位置する小さな漁村で、フロリダのマナティーに似た哺乳類、絶滅の危機に晒されているジュゴンの生息地である珊瑚礁があるところだ。そこに大規模なアメリカ海兵隊の基地を建設するには、杭打ち方式か埋め立てによって滑走路を建設しなければならないが、それは珊瑚礁を死滅させてしまう。環境保護家はずっと抗議を続けてきたが、2010年の初めには、名護市は自分の町におけるあらゆるアメリカの基地建設に反対する公約を掲げた市長を当選させた。

 2009年に政権の座に着いた日本の首相、鳩山由紀夫の勝利の一因は、合衆国に対して普天間海兵隊飛行場の撤去と全ての海兵隊の沖縄から撤退を求める公約のおかげである。しかし火曜日に彼は沖縄を訪れ、深くお辞儀するとともに、住人に対して文句を言わないようにぜひにとお願いした。

 私は鳩山の振る舞いは臆病で軽蔑すべきものだと思うが、それよりも日本人をひどくもこのような屈辱的な袋小路に追い込んだアメリカ政府の傲慢さを更に非難するものである。アメリカはそうする余裕もなければ、ますます多くのいわゆる受け入れ国が最早望んでもいない、我らが軍事基地帝国を維持することに強迫観念を抱くようになっている。私は合衆国に対して、その傲慢な態度を改めることを、普天間の海兵隊を合衆国の基地(私がその近くに住んでいるキャンプ・ペンドルトンのような)に帰還させることを、そして沖縄の人々に彼らの65年間にわたる忍耐を感謝することを強く提案したい。

原文:Los Angeles Times - Another battle of Okinawa by Chalmers Johnson

 実は「Internet Zone::WordPressでBlog生活」でこの記事の存在を知ったのだが、一通り訳し終わった後改めて同サイトを見ると GAKU さんが、ご自分の訳を投稿されていた。なんと!

 まあいいや。

 GAKU さんへ。いくつかの訳語を参考にさせてもらいました。この場を借りて感謝申し上げます。
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by sea_of_sound_2008 | 2010-05-12 17:29 | 政治