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by sea_of_sound_2008
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韓国哨戒艦沈没事件:合同調査団最終報告書――李明博政権の「北風」に巻き込まれるな

 韓国の哨戒艦が沈没した原因がなんであれ、確実にわかっていることが二つある。一つは、韓国では「北朝鮮関与説」以外の異論が提出されていること、もう一つは、そうした異論に対して韓国政府が言論弾圧を行っていること。そうした事情を踏まえるなら、日本が韓国と同様に「北朝鮮関与説」に染まろうとするのは早計だ。


 今日20日、3月26日に韓国で起きた哨戒艦の沈没事件に対して、合同調査団が「北朝鮮製の魚雷による沈没」とする最終報告書を発表した。といっても、その結論は既に知られていた。韓国政府が散々漏らしてきたからだ。李明博大統領は、今月初めには既に「北朝鮮関与説」に心を決めていたようだ。
 哨戒艦沈没事件が日本でも俄然注目されるようになったのは、おそらく16日に行われた日韓外相会談を境にしてだ。韓国の柳明桓外交通商相が岡田克也外相に、北朝鮮の犯行であることを断定したからだ。岡田外相は、韓国側の見解を全面支持する日本の姿勢をはっきりさせている。

 これは哨戒艦沈没を巡る韓国と北朝鮮の政治対立に、日本が巻き込まれていくことを意味する。だが、そのことは日本では充分に検討されているとは言えない。岡田支持発言を批判する声も紙メディアにはなく、インターネット上にしかないようだ。だが、日韓外相会談の時点で、既にこの事件がかなり錯綜したものであることはわかっていた。


 韓国の「北朝鮮関与説」以外の説にはどのようなものがあるのか?二つ取り上げる。

 一つは、『ハンギョレ21』が報道した未回収機雷説だ。「ペクリョン島を要塞化せよ」との朴正熙元大統領の指示に基づき、1970年代に敷設された機雷が、その後の回収作業にもかかわらず一部未回収のまま残されており、それに接触した可能性があるという。要職にあった元軍人が匿名で証言した。
 もう一つは、KBS テレビが、「謎の第3ブイ…なぜ?」という特集で示唆した、米潜水艦との衝突説だ。「田中宇の国際ニュース解説」と「河信基の深読み」での紹介をまとめると、同番組は、沈没した哨戒艇とは別の「第3ブイ」でも捜索作業が行われたことに注目し、そこにアメリカの潜水艦が沈没していた可能性を指摘するものであるらしい。

 なんとこの放送は当局から名誉毀損で告訴されてしまった。

 言論弾圧の状況に関して、やはり二つの例を取り上げる。哨戒艦が沈没した原因に対しては、いろいろと推測が成り立つが、韓国政府はそうした推測を許さない態度で望んでいる。

 まず、韓国の検察は、インターネット上の言論活動に対して、「デマ」への処罰という形で取り締まる姿勢を見せている。それらの中にはくだらないものもあるだろうが、言論の場に権力が介入することは、言論全体を萎縮させる効果をもたらす。
 先程述べたように、KBS の番組「謎の第3ブイ…なぜ?」に対しては、韓国政府が名誉毀損で告訴している。この番組はインターネットでも閲覧できたそうだが、現在は閲覧できず当該ページには「法廷闘争のため原稿掲示と映像サービスは中断します」とあるだけだ(この訳文は「河信基の深読み」による)。
 こうして権力を使って異論を排除してゆくということは、当局が許した公認の結論以外は許されないということだ。「デマ」とは、畢竟「当局の見解以外は全てデマ」「北朝鮮関与説以外は全てデマ」ということではないのか。


 昨日と今日、鳩山首相もまた韓国を支持する発言をした。だが、その日本が支持することに決めた韓国の状況はというと、以上かいつまんで見たように、非常に問題があるものだ。それに同調するのは正しい選択とは言えない。また韓国内でも野党やハンギョレのような進歩派メディアは、政府と違った意見を持っている。
 日本で差し当たりこの先に起こりそうなことは、世論が悪魔化された北朝鮮のイメージを自己確認することだろう。やっぱり北朝鮮はこういうことをする国だ、だから北朝鮮には強硬論で望むのが正しい、というわけだ。もう一つ起きそうなことは、普天間基地問題とのリンケージだ。この合同調査団報告書の出した結論は、「北朝鮮の脅威」に対して海兵隊の「抑止力」が必要であることの証左として喧伝されるかもしれない。
 この件をマスメディアがどう伝えるか非常に心配だ。日本のマスメディアは、拉致事件について強硬論一色から未だに抜け出していない。だが、日本政府が韓国政府に同調し、日本政府にマスメディアが同調するということでは困るのだ。それは結局は韓国の異常な状況を日本に伝染させることになる。


 あと、二三のことを書いておきたい。

 まずはアメリカがこの問題にどう関わっているのかということ。KBS が伝えた米潜水艦との衝突説が本当だとしたら当事者であるのはもちろんだが、そうでなくても朝鮮半島の情勢にアメリカが関わっているのは当然だ。当初アメリカは北朝鮮の犯行とする見方には否定的だった。それが何故変化したのか。今後東アジアで何をしようとしているのか。

 また、特に書いておかなければならないのは、仮に北朝鮮が関与していたとしても、北朝鮮に強硬な姿勢で望むのが唯一の方策ではないということだ。雑誌『世界』6月号の連載「ドキュメント 激動の南北朝鮮」によれば、犠牲者兵士の家族協議会代表は、李大統領に対して「同じ方法で仕返しするようなことはいけない」と語ったという。「北朝鮮関与説」が韓国政府の唯一の見解となっている現状では、それ以外の説を検討することは重要だが、それが全てではない。


 今後起きることが何であれ、李明博政権の強硬論は韓国の政治だけでなく、日本の政治にも良い影響を及ぼさないであろう。これがきっかけとなって日本で対北朝鮮強硬論が勢いづくことが考えられる。李明博政権の「北風」に巻き込まれてはいけない。
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by sea_of_sound_2008 | 2010-05-20 14:57 | 政治