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by sea_of_sound_2008
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「九条を守る」解釈改憲――民主党流の「護憲」とそれを見抜けない「マガジン9条」

 まるで民主党が護憲派であるかのような表象が、メディアによってなされている。「マガジン9条」は民主党候補へのアンケートを行った。「+++ PPFV BLOG +++」で知ったのだが、そのアンケートの感想として、トップに一時次のような文章が掲載されていたようだ(Googleキャッシュに残っていたので、ローカルに保存してある。現在はもうキャッシュも見られない)。

 そこで「民主党候補者に憲法9条を問うアンケート」を実施しました。……回答はとても興味深いものです。6項目の選択肢では答えられないという「7・その他」が一番多かったというところに、民主党の現在の姿が集約されているように思われます。でもその理由を読むと、多くが「9条の意義を大切にし、安易な改正は許さない」としていることが分かります。

 民主党政権になっても、九条は守られると言いたげな文章である。同サイトは「コラムリコラム」のコーナーでも、毎日新聞のアンケート結果を引用して、「民主党の候補者たちの回答は、『マガジン9条』のアンケート結果とよく似ている。……『他の部分には問題があるが、9条は変える必要がない』という回答が多かった」と同様の主張を行っている。毎日の当該記事は以下の通りである。

選挙:衆院選 候補者アンケート分析(その1) 憲法改正でも温度差

 民主党も憲法改正に「賛成」が57%で多数派だが、自民、公明両党より低い。「反対」も24%あり、改憲派と護憲派が混在する党内事情が反映された。9条改正については「反対」66%、「賛成」17%で、公明党と同様、9条以外の改憲を支持する意見が強い。集団的自衛権の憲法解釈については「見直す必要はない」61%、「見直すべきだ」25%だった。

引用元:http://mainichi.jp/select/seiji/09shuinsen/news/20090820ddm010010124000c.html (魚拓)

 さて、民主党は九条を守る「護憲派」なのだろうか?以下それを分析するのだが、ある意味ではそうだと言える。ただし民主党特有の意味において、である。その辺りの事情を、まずは2004年3月の「横路・小沢合意」に見よう。小沢一郎と旧社会党系のリーダーである横路孝弘の政策協議の成果である。長くなるが全文引用する。要点は、九条は変えない、だが国連の下に軍を送る、この二つだ。

                        2004.3.19
日本の安全保障、国際協力の基本原則


 冷戦の時代は終焉したとはいえ、世界各地においては紛争が頻発している。世界の安全保障と国際協力について確固たる基本原則を改めて定め、確認しておくことは時代の要請でもあり、また、喫緊の課題でもある。

 私共は、我が国の安全保障及び国際協力について、この間慎重かつ精力的に検討を続けてきたが、ここに次の通りの基本原則で一致したので公表する。

<現状認識>

1.いまのままでは自衛隊は米国について世界の果てまでも行ってしまう危険性が高い。政府自民党による無原則な自衛隊の派遣に歯止めをかけなければいけない。

2.世界秩序を維持できる機能を有する機関は国連しかない。日本も国連のこの警察的機能に積極的に貢献する。

3.憲法の範囲内で国際貢献するために、専守防衛の自衛隊とは別の国際貢献部隊を作る。

4.現在国連はその機能を充分果たしていない。日本は国連の組織、機能を拡充、強化するようあらゆる機会に国際社会に働きかける。


<基本原則>

1.自衛隊は憲法9条に基づき専守防衛に徹し、国権の発動による武力行使はしないことを日本の永遠の国是とする。一方においては、日本国憲法の理念に基づき国際紛争の予防をはじめ、紛争の解決、平和の回復・創造等国際協力に全力を挙げて取り組んでいく。

2.国際社会の平和と安全の維持は国連を中心に行う。それを実現するために、日本は国連のあらゆる活動に積極的に参加する。

3.国連の平和活動への参加を円滑に実施するために、専守防衛の自衛隊とは別に、国際協力を専らとする常設の組織として「国連待機部隊(仮称)」を創設する。待機部隊の要員は自衛隊・警察・消防・医療機関等から確保する。また、特に必要があるときは自衛隊からの出向を求める。

4.将来、国連が自ら指揮する「国連軍」を創設するときは、我が国は率先してその一部として国連待機部隊を提供し、紛争の解決や平和の回復のため全面的に協力する。

5.国連軍が創設されるまでの間は、国連の安全保障理事会もしくは総会において決議が行われた場合には、国際社会の紛争の解決や平和と安全を維持、回復するために、国連憲章7章のもとで強制措置を伴う国連主導の多国籍軍に待機部隊をもって参加する。ただし、参加の有無、形態、規模等については、国内及び国際の情勢を勘案して我が国が主体的に判断する。

6.安保理常任理事国の拒否権行使等により安保理が機能しない場合は、国連総会において決議を実現するために、日本が率先して国際社会の意思統一に努力する。

以上

  2004年3月19日
                        横路孝弘

*強調は引用者

引用元:http://www.yokomichi.com/monthly_message/2004.03.19.htm

 読んで明らかなように、これは国連に名を借りた解釈改憲であり、海外派兵の恒久化である。であれば「9条の意義を大切にし、安易な改正は許さない」とすることに、なんの意味もないだろう。九条を改正しなくても、解釈改憲によって、国連の下における海外派兵は可能だと言っているのだから。

 それどころかこれは「日本国憲法の理念に基づ」いているのだという。だが、憲法の理念はただの平和主義ではない。非武装平和主義である。それをねじ曲げる「横路・小沢合意」は、つまみ食い的な解釈改憲であり、憲法理念の剽窃者であり、平和主義の簒奪者である。

 左派である横路と実力者である小沢が、党内で意見がバラバラとされる安保・憲法の点で合意したことは、おそらく大きな影響を与えただろう。「民主党の政策議論の到達点を2009年7月17日現在でまとめたもの」である「民主党政策集INDEX2009」に、この民主党流の憲法解釈が反映しているのを見ることが出来る。

自衛権の行使は専守防衛に限定
 日本国憲法の理念に基づき、日本および世界の平和を確保するために積極的な役割を果たします。自衛権は、これまでの個別的・集団的といった概念上の議論に拘泥せず、専守防衛の原則に基づき、わが国の平和と安全を直接的に脅かす急迫不正の侵害を受けた場合に限って、憲法第9条にのっとって行使することとし、それ以外では武力を行使しません。

国連平和活動への積極参加
 国連は二度にわたる大戦の反省に基づき創設された人類の大いなる財産であり、これを中心に世界の平和を築いていかなければなりません。

 国連の平和活動は、国際社会における積極的な役割を求める憲法の理念に合致し、また主権国家の自衛権行使とは性格を異にしていることから、国連憲章第41条および42条によるものも含めて、国連の要請に基づいて、わが国の主体的判断と民主的統制の下に、積極的に参加します

*強調は引用者

引用元:http://www.dpj.or.jp/policy/manifesto/seisaku2009/08.html

 国連憲章の第四十一条と第四十二条は、「平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動」を定めた第七章にある条文である。第四十二条は「国際の平和及び安全の維持又は回復に必要な空軍、海軍又は陸軍の行動をとることができる」としているのだから、明白に「武力による威嚇又は武力の行使」を禁止した憲法九条一項に違反する。これでもまだ民主党は九条を守る護憲派だろうか。

 更に指摘しておかなければならないのは、国連憲章は平和的手段による解決を大前提としていることだ。加盟国の行動原則を定めた第二条三項では、「すべての加盟国は、その国際紛争を平和的手段によつて……解決しなければならない」とし、第六章では「紛争の平和的解決」を定めている。それらの例外としてあるのが第七章なのだ。民主党は、憲法だけでなく、国連憲章もつまみ食いをしている。

 また、民主党が想定している国連憲章の第四十二条と第四十三条は、国連軍についての規定なのだが、未だに国連軍が編成されたことはない。国連決議の下に軍事的措置が行われるにしても、それは加盟国が自発的に参加する多国籍軍であり、個別的自衛権もしくは集団的自衛権の行使として参加しているのである。民主党が「個別的・集団的といった概念上の議論に拘泥せず」としているのは、自衛権の拡大を目指すものではないか。

 この問題点は、自民党系の論者によっても指摘される有様である。

 しかし問題は「国連軍」の意味であって、小沢調査会の提言と今回の小沢提言とではその内容が異なる。もしそれが国連憲章42、43条に基づく「正規の国連軍」を指すならば、小沢調査会の言うように、軍を国連に提供した後はその指揮、命令権は国連加盟国の手を離れ、安保理事会に委ねられたものとみることもできないことはない。加盟国は国連との間で特別協定を結ぶことにより、主権の一部を国連に委譲したと解することも可能だからである(ただし、わが国がこのような特別協定を結び、武力行使を目的として自衛隊を国連に派遣することについては、憲法上、疑義がある)。

 ≪多国籍軍と集団的自衛権≫

 だが、このような「正規の国連軍」はいまだ実現しておらず、これまでに編成された「国連軍」はすべて「多国籍軍」にとどまっていた。国連の指揮下にあった湾岸戦争時やイラク派遣の「国連軍」、それにNATO指揮下のISAFも全て多国籍軍である。この種の「多国籍軍」は国連決議によって一定の正当性が担保されてはいても、最終的な指揮、命令権は各国に留保されており、軍隊派遣の根拠も各国の個別的ないし集団的自衛権に基づいている。

引用元:http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/071030/stt0710300316000-n1.htm (魚拓)

 このように民主党流の「護憲」の内実を探れば、「9条の意義を大切にし」たところで、「憲法改正でも温度差」があったところで、それが九条を守ることに役立つどころか、却って解釈改憲によって海外派兵に利用され、集団的自衛権はおそらく拡大解釈され、九条は骨抜きにされるだけだということがわかるだろう。

 「マガジン9条」も毎日新聞も、候補者にこう聞くべきだったのだ。「あなたは本当に国連の下なら派兵が合憲だと考えているのですか」と。そしてそう言う観点で見れば、「マガジン9条」の候補者アンケートの選択肢が、ほとんど無意味であることに気付かされる。

 ところで、我々は既にこのような憲法のつまみ食いを体験済みである。2003年12月、当時の小泉首相は、自衛隊派兵基本計画を閣議決定した後の記者会見において、イラク派兵を「国際社会の中で名誉ある地位を占めたいという憲法の理念にかなう」ものだと放言した。もちろんこれが噴飯ものの解釈であることは言うまでもない。だがその結果派兵は行われ、それが憲法違反だと確定するには、2008年4月の名古屋高裁の判決を待たねばならなかった。

 しかし、この決着が付いたはずの問題を巡って、民主党は小泉の後を追っている。

 民主党の直嶋正行政調会長は、「政権を担当させていただければ、作業に着手する」「状況によって憲法解釈を変えることはある」と、政権を獲れば憲法解釈を変更すると述べている。小沢は、ISAF参加は合憲と主張して話題となった「世界 2007年11月号」の論文で、「加えて貴方は、『民主党内でも意見がまとまっていない』と書いてますが……昨年末まで二ヶ月余の党内議論の末、先ほど私が述べたような方針(「政権政策の基本方針」第三章)を決定してます」と書いている。

 「政権政策の基本方針」の第三章は、前述の「民主党政策集INDEX2009」とほとんど同じものである。小沢は党内がそれでまとまっていると言っているのだ。従って民主党の「護憲」は二重に疑わしい。まず解釈改憲を容認する公算が大きい。次に党の方針に反対してまで憲法を守るかどうかわからない。イラク派兵という暴挙を断行した小泉政権と、それに続く内閣を倒すためのものだったはずの「政権交代」が、更なる解釈改憲と海外派兵の恒久化をもたらすとしたら、皮肉と言う他ない。



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by sea_of_sound_2008 | 2009-08-27 23:31 | 政治